廃棄都市・10

「まあ、当然の事なんだがな」
店主は話を続ける。
「化け物共の開発に携わっていた研究員は全員処刑だ」
「それが…」
「ひとり残らず、地下研究施設で殺害され、放置」
背筋にひんやりとしたものが走る。


僕だって、幾多の血を見てきた。
何よりも大事な、
そして作るべきではなかった家族さえ、皆戦いで亡くした。
それでも、今立っているこの土地の下。
その凄惨な光景がそのまま、閉じ込められているのか。
半世紀以上も、この場所に。


「遷都を謀り、仲間を処刑した男は、そこで初めて考えたんだ」
星が光り、地に仄かな明かりを映す。
この場所に似合わない程、順調に育っている植物。
「まあ簡単に言うと、自分がした事のでかさ、てやつだな」


しばらく、無言が続いた。


「贖罪って何だか知ってるか」
「言葉の意味ならば」
「戦う奴らで、その事を考えない奴はいない」
「……否定は、しません」
「だが、考え過ぎると、おかしくなっちまう」
それはそうだ。
死ぬか、生きるか。
生きる事を選択した以上、それは免れない業だ。
兵士である以上は。


「そいつは、おかしくなっちまったんだよ」
「その、男が…ですか」
「リーアはこの都市に封印をかけようとした」
「ええ」
「だがそいつは、命を賭けてそれを阻止したんだ」
「……どういう、事でしょうか」


自分で壊したものを、
自分で守りたかったんじゃないのか。
初めて命を賭けた筈なのに、
結局その男は死ぬ事も許されなかった。



「代わりに贖えと、リーアはその男に魔力を付与した」



以来、封印を守り続ける事を命ぜられ、
尚且つ男は「廃棄都市」からの移動を禁じられた。



「それが、その男が、…あなたなんですか」


店主は笑う。
「さあな、常連さんよ」
そのまま踵を返し、裏口を開ける。
「遅くなっちまったな、悪い事をした」
「……いえ」
「ただ、最初に言ったろ」


事実だと思うな


その言葉。


分からない。
何故僕のような通りすがりの兵士に、
彼がこんな話をしたのか。
分からない。


そのままで。
分からないままで、良いのだ。
そう思い直し、店主の背中を見る。
少し曲がったその背に、
何を負っているのか。


それは、僕も同じだ。


「また来ますよ」
「ああ。店たらしすんなよ」
「だから、何ですか店たらしって」
MFATに向かう直前、背後から声が聞こえた。
「また明日も生きてこいよ」
僕は振り返る。




ただ、もうそこに、彼の姿はなかった。