廃棄都市・3
どうして今まで気が付かなかったのか。
僕の中で、次々と糸が解れ、また結ばれてゆく。
廃棄都市。
かつては都市だった場所、此処が荒廃する以前。
まさかこの場所は――「彼ら」のかつての王国だったのか。
いや、全ては推測でしかない。
「まずは、家族を大事にしておけ」
「…え?」
唐突な話の切り口に、僕は面食らう。
「お前さんがどの都市から来ているかは知らん。
まあ、その機体と服装で大体分かりはするがな」
黙る。ここは、話を聞く事に徹するとしよう。
「あの国ならば、お前さんの家族を大事に守ってくれるだろう」
「そう、ですね」
「大分成長した。大分完成した。国としては」
店主は器具を磨いていた手を止め、虚空を眺める。
「但し、余りにまだ、凶暴過ぎるんだ」
僕に視線を戻し、彼は続ける。
「だから、お前さんも気を付けろ――人は、所詮、人に過ぎない」
「……あの」
「お前さんと同じ格好だったな、確か」
「これ、ですか」
戦闘服は独自に開発された軽装で、ラインの色で階級を示す。
自分の左腕に、光る銀色。
「俺とお揃いだった、という事だな」
「貴方は」
「若そうな外見だが、意外に出世頭だ」
そう言って店主は笑う――今度は、声だけだ。
「だからこそ、気を付けた方がいい」
「……え、あの」
「まあ、気付き始めた時には既に手遅れだがな」
いつの間にか珈琲はつぎ足されている。
「人生ってのは、まあ大体、そんな感じだがな」
彼が店内の灯りを点ける。
夕暮れの陽は無機質の都市を照らし、そして沈んでゆく。
「人生論ですか」
「違うのか?ほら、結婚はタイミングとも言うだろうに」
僕の左手の指輪を見たのか、店主はやや軽い口調だ。
反射的に手を隠し、愛想笑いを返す。
「気付いた時には、全部手遅れなのさ」
彼は独り呟いた。
「全部、全部、全部な」
僕は机の下で指輪の感触を確かめる。
どれだけ会っていないのか――3日どころではない。
「手遅れにしたくはない」
「だが、全てが壊れゆく様を」
「ただ見ているしかない状況の下で」
「お前ならどうするかい」
途切れ途切れの言葉の中、僕は口を開く事が出来なかった。
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